横浜市の整形外科、外反母趾、関節リウマチ、吉野整形外科  

関節リウマチの治療薬「生物学的製剤」
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「関節リウマチ最新治療薬について」
骨破壊を強力に抑える生物学的製剤に期待

東邦大学医学部付属大森病院膠原病科教授の川合眞一氏が行ったレミケード治療に関する市民公開講座の内容です。

 


 関節リウマチとは

 

  関節リウマチは、進行にともない全身の関節が破壊される自己免疫疾患で、日本には約70万人の患者がいるとされます。進行すると「痛み」や「関節変形」により、日常生活に著しい制限を受ける場合があります。治療においては、消炎鎮痛剤や抗リウマチ薬(メトトレキサート)を使用するのが一般的ですが、症状によっては充分な効果が得られない場合もあります。



 2003年に、最初に登場した生物学的製剤であるレミケード( 一般名:インフリキシマブ )は、従来の抗リウマチ薬では症状の改善が得られない患者さんに対しても、高い効果を期待でき、患者様からは「痛みから開放され今までにない深い眠りを体験できた」、とか「投与翌日より有効で杖がほとんど不要になった」等の声が得られるようになりました。

  当院は2006年12月に社会保険庁社会保険事務局の認可を受け、レミケードによる治療を開始しました。その後さらに、エンブレルやヒュミラといった我が国で用いることのできる他の生物学的製剤が新たに登場し、関節リウマチに対する治療の選択肢が広がりました。

 現在、当院では個々の患者様の病態やライフスタイルなどを考慮してこれら3つの生物学的製剤の中からより適切と思われるものを選択し治療を行っております。


 


 生物学的製剤とは

 

  関節リウマチの症状には「炎症性サイトカイン」の働きが関わっています。これを抑えることで、関節リウマチの炎症を止める薬が「生物学的製剤」です。その中でもTNFαを抑える薬(TNF阻害薬)には先ほど出てきた3つの薬剤があり、どれも従来の抗リウマチ薬以上の高い効果が認められています。これらは欧米諸国を中心に80カ国以上で、70万人以上の患者さんに投与されており、日本でも延べ3万人を超す多くの患者さんが使用しています。今日その副作用に関しては、その発現傾向と対策も明らかとなり、より安全にお使い頂けるようになってきています。




 生物学的製剤が適応となる患者様



 生物学的製剤は、2008年の米国リウマチ学会で決定された勧告に基づき、病気にかかってからの期間や病気の勢いなどを考慮して使うようにされております。例えば発症早期の患者さんでも病気の勢いが高度であれば導入を検討されます。しかし、関節リウマチと診断を受けているすべての患者さんが使用できる訳ではありません。関節リウマチの診断を受けていて、メトトレキサート(リウマトレックス)などの従来の抗リウマチ薬では十分な治療効果が得られない場合、また痛みが治まらない場合に使用を検討します。また、肺や肝臓に障害があり、他の抗リウマチ薬が使用できない場合なども適応となる場合があります。

 


 それぞれの生物学的製剤の特徴は?

 

 生物学的製剤は、2003年に一番最初にレミケードが認可され、続いて2005年にエンブレル、続いて2008年にヒュミラが認可されました。どれもTNF阻害薬ですが、それぞれに下図のような特徴があります。レミケードは一部にマウス由来の蛋白をもつ製剤ですが、それに対してエンブレルとヒュミラは完全ヒト由来なので、体内に入ったときの免疫反応がよりマイルドであるとされています。レミケードは点滴、エンブレルとヒュミラは皮下注射で投与します。また、それぞれ投与する間隔が異なるため、患者様のライフスタイルや私たちの医学的な見解を交えて患者様にとってより有用と考えられる製剤を選択します。

 

レミケード®

(インフリキシマブ)

エンブレル®

(エタネルセプト)

ヒュミラ®

(アダリムマブ)

投与間隔

初回投与後、2週、6週後に投与し、以後8週ごとに投与
1週間に2回 2週間に1回
投与ルート

静脈内投与

(点滴静注)

皮下投与

皮下投与

MTX※併用の有無
必須 どちらでもよい どちらでもよい

                         ※ MTX ・・・ メトトレキサート(リウマトレックス®など)

 

 この表の中でエンブレルとヒュミラにおいてはメトトレキサートの併用が必須とはなっていませんが、併用した方がより有効性が高まることがわかっています。そこで、できるだけ生物学的製剤とメトトレキサートは併用することが原則です。しかし、メトトレキサートが種々の理由で使用できない症例もあり、このような場合にはエンブレル、ヒュミラ単独で投与します。

 

 レミケード

 

 レミケードは点滴投与のため、患者様の拘束時間が長くなるといった欠点がありますが、逆に投与間隔が8週間と長いため、通院を頻繁にしなくても良いといった利点があります。また、即効性に優れているため、病気の活動性が高い若い患者様においては特に有用といえます。しかし、半年を過ぎた頃から20〜25%の患者様で効果が減弱することがあります。こういった症例に対してはレミケードの増量または投与間隔を短縮させるといった対応策が新たな選択肢としてできたことで更なる症状の改善効果が期待できるようになりました。


 

 エンブレル

 

 これに対してエンブレルは一度効いたら効果が落ちにくいといった利点があります。一方、症状の改善を自覚するまでに平均して約2週間を要し、レミケードに比べて効果の発現がやや遅い傾向があります。投与法に関しては数回のレクチャーを経ることにより皮下への自己注射が可能となるため通院頻度が少なくて済みます。メトトレキサートの併用が必須でないことは利点の一つですが、前述したとおり、どの生物学的製剤においても併用した方がより良い成績が得られるため、本剤においても積極的に併用しています。なお、従来の週2回に分割する使い方と週1回にまとめて投与する方法とがありますが、どちらかの効果が劣るということはありません。

 

 ヒュミラ

 

 2008年と比較的最近承認された薬剤にヒュミラがあります。これはレミケードと同じ程度の効果が期待でき、点滴ではなく皮下注で、しかも2週間に1回の投与で良く、自己注射も可能であるという使い勝手の良さがメリットの薬剤といえます。メトトレキサートの併用は必須ではありませんが、エンブレル同様に効果を高める目的のほか、特に日本人は薬剤に対する抗体を作りやすいため、抗体の出現率を抑えるためにもメトトレキサートを併用します。



 以上、3種の製剤はほぼ同等の効果が期待できるため、それぞれの使い分けにおいては、「メトトレキサートの併用が可能かどうか?」、「即効性を求める病態か?」などに加え、「投与間隔や投与法」などが患者様のライフスタイルにあっているかどうかを考慮した上で最も適した製剤を患者様と一緒に決めています。





 生物学的製剤の効果

 

生物学的製剤の投与により、次のような今までの薬剤にはなかった高い効果が期待できます。


 
生物学的製剤の効果
(1)
関節の骨破壊が進むのを遅くします。或いは停止します。
(2)
関節の腫れや痛みを、速やかに軽減します。
(3)
日常の生活動作(歩行、身支度、その他の活動等)を改善し、生活の質を向上します。


 

 関節リウマチの主な治療の目的は、痛みなどの自覚症状を和らげることと伴に関節破壊を抑止することです。 従来の抗リウマチ薬では、関節破壊の進行そのものを止めるのは非常に困難でした。しかし、生物学的製剤は、関節の炎症を進める物質(TNF)の働きを抑えたり、TNFを作る細胞そのものを壊すことにより、関節の破壊を食い止める効果が期待できるのです。



 
1、総合的な評価


 

 以下に示す結果は、レミケードによる治療を始めてから6週間後(3回目の点滴前)に、主治医によって「効果あり」と判定された人の割合を調べたものですが、約95%の患者様で効果がみられました。





2、日常生活動作の改善

 

 下のグラフはヒュミラを始めてから6カ月後の患者様の日常生活に必要な動作の改善度を、プラセボと比較した結果を示したものですが、プラセボ投与群では治療前より日常生活動作が悪化しているのに対し、ヒュミラ投与群では改善していることがわかります。

   

                





3、 関節破壊の進行抑制効果

 

 下のグラフは、エンブレルによる関節破壊の進行抑制効果を示したものです。X線を撮影し、関節に起きた変化を点数(スコア)化して調べた結果、エンブレルは関節破壊の進行を抑えることが認められました。グラフではスコアが高いほど関節破壊が進んでいることを示します。

 

  







4、効果があらわれるまでの速さ



 血液検査でCRP(炎症反応)を測り、炎症の度合いを調べました。CRPは初回の点滴から2週間後には0.5近くまで下がっており、レミケードの効果が速やかにあらわれていることがわかりました。






  


 生物学的製剤の使用における安全性



 生物学的製剤を使用すると関節リウマチによる炎症が治まる一方で、体の免疫力が低下してしまいます。 従いまして、生物学的製剤の投与によって通常よりも感染にかかりやすくなり、肺炎、敗血症、結核等への注意が必要です。特に注意が必要なのは結核です。生物学的製剤による治療を開始する前には、必ず結核の検査をお受け頂きます。

  また、現在、結核を発症している患者さんには原則として生物学的製剤の投与は行いません。なお、これまでに結核に感染したことがある患者さんで、生物学的製剤の治療を実施される場合には、結核予防の治療を実施しながら生物学的製剤をご使用頂きます。また、心臓が悪い方などに悪影響が出る恐れがあり、これらを十分に検討したうえで使用するように心がけています。





 生物学的製剤の費用


 生物学的製剤は、薬の特性上不純物を精製する過程で多くの費用がかかります。そのため、効果は高いものの、高額な治療費がかかってしまいます。費用のおよその目安としては3割負担の方で年間35〜55万円かかるのが一般的です。このほかに、併用している薬、診療費、検査費も必要なので、患者様にとって負担となることは事実です。ただし、身体障害者の1級と2級を持っている人は、公的な補助で全額返還されます。また、高額療養費制度の負担軽減措置で、治療費の一部を返金してもらえるケースもあります。自治体や健康保険の種類によって、補助の金額や方法が異なりますので、お住まいの自治体やケースワーカーなどに相談してみるとよいでしょう。その他、悪性関節リウマチの認定を受けている方、生活保護を受けている世帯の方の場合も、自己負担額が軽減されます。

(※)高額療養費制度とは、いったん通常の負担額を医院受付で支払った後、1ヶ月の自己負担限度を越えて支払った医療費が、後日払い戻される制度です。

 

 



 生物学的製剤についての見解



「関節リウマチ最新治療薬について」
〜骨破壊を強力に抑える生物学的製剤に期待〜

東邦大学医学部付属大森病院膠原病科教授 川合 眞一氏




川合 眞一(かわい・しんいち)氏

  1977年慶應義塾大学医学部卒業。79年同大学内科リウマチ研究室。87年東京都立大塚病院リウマチ膠原病科医長。91年聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター講師。94年同助教授。99年同教授。2004年、東邦大学医学部付属大森病院膠原病科教授。日本リウマチ学会評議員、日本臨床薬理学会評議員、日本炎症・再生学会理事。


 

 関節リウマチの初期症状は、関節の腫れや痛みですが、病気が進むと関節が壊れてきます。時には、骨と骨が完全にくっついたり外れたりして、身体障害となることもあります。関節リウマチのはっきりした原因は不明ですが、もともとリウマチになりやすい遺伝的な背景がある人が、何らかのウイルスや細菌に感染して免疫に異常が起こり、関節リウマチの発症に至るのではないかと考えられています。

 関節リウマチ患者さんの関節では、滑膜が異常に増殖してパンヌスと呼ばれる塊ができます。パンヌスには、たくさんの細胞(リンパ球T細胞やB細胞、マクロファージなど)が集まっていて、炎症のもとになる物質を作り出します。その代表的なものが、TNFαと呼ばれるものを中心とした炎症性サイトカインです。ですから、炎症性サイトカインを抑えることが、関節リウマチの治療に非常に効果を発揮するのです。

 炎症性サイトカインを抑える薬が出るまでは、関節リウマチの薬は、大きく分けて三種類でした。一つは非ステロイド性消炎鎮痛剤。これは、痛みや炎症を止める薬です。もう一つはステロイド薬。これは主に、炎症と免疫異常に効く薬ですが、長期間使うと副作用が問題になってきます。三つ目は抗リウマチ薬。これは免疫異常や炎症だけでなく、関節の破壊にも効果がみられるものもあります。

 アメリカのリウマチ治療ガイドラインは、とにかく早く発見し、早く治療するという方針です。そうすることで、腫れや痛みから解放され、関節の破壊も予防できるからです。ですから、関節リウマチの診断がついたら三カ月以内に抗リウマチ薬を使って、積極的に治療します。効果が不充分なようなら、TNFαを抑えるような新しい抗リウマチ薬である生物学的製剤を使い、それでもだめならいよいよ手術も考えるという治療方針なのです。つまり、生物学的製剤を含む抗リウマチ薬が治療の中心で、ステロイド薬や非ステロイド性消炎鎮痛剤は補助的に使うという位置づけになっているのです。日本の専門医の治療も、ほぼアメリカと同じ考えです。

 抗リウマチ薬の開発の歴史を見ると、最初の注射金剤は、元々は感染症の治療に使われていた薬です。そのほかの抗リウマチ薬も、元はマラリアの薬だとか白血病や悪性腫瘍の薬で、はじめから関節リウマチをターゲットに開発されたものはなかったのです。違う病気の治療薬が、たまたま関節リウマチに効いたから使われているというわけです。

 ところが最近、新しい薬として生物学的製剤というものが開発されています。これは、先ほどからお話しているTNFαを中心とした炎症性サイトカインを抑えることを目的に開発された薬で、はじめから関節リウマチの治療薬を作ろうとしてできた薬だという点で、これまでの薬とは本質的に違っています。

 昨年、日本で初めての生物学的製剤が認可されました。これは、抗TNFα抗体製剤といって、炎症性サイトカインのTNFαにくっついて中和する薬です。いわば、炎症の元であるTNFαを狙い打ちするわけです。

 これまで、日本には九種類の抗リウマチ薬がありましたが、そのなかで関節破壊を抑える作用が臨床試験できちんと証明されているのは三剤だけです。それも、関節破壊の進行を遅らせることはできますが、完全に止めてしまうことはできませんでした。ところが、抗TNFα抗体療法を二年間行って、X線で骨の状態を調べたところ、破壊が全く進行していないばかりか、少しよくなっている人もありました。このように、抗TNFα抗体製剤は骨破壊を強力に抑える非常に頼もしい薬だということで、大いに期待されています。

 ただし、抗TNFα抗体療法は、感染症を悪くしたりかかりやすくするという副作用があるため、すでに感染症にかかっている人や結核にかかったことのある人は、それを治してからではないと使えません。もちろん、これまでのリウマチのお薬にも肝臓や腎臓に影響するもの、消化器の障害を起こすもの、感染症を起こすものなど、薬によってさまざまな副作用があります。ですから、それぞれの薬の特徴を知っているリウマチ専門医が、患者さんと相談しながら、その患者さんに適したものを選んでいくことが大切です。



2004年3月21日 ウィルあいち内ウィルホール(愛知県女性総合センター)





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TEL.045-431-0111
JR横浜線大口駅徒歩1分
院長 吉野匠

(日本整形外科学会認定専門医)
Email:info@yoshino-seikei.jp

神奈川県横浜市神奈川区大口通56-5
大口メディカルセンター1階

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