腰痛性疾患について | |
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腰痛の生涯の罹患率は約80%といわれるように、腰痛は人類が直立二足歩行を行うようになってからの宿命的愁訴と考えられてきました。 しかし、1日に20〜30kmもの距離を狩猟のために移動するアフリカ民族を調査した結果では、意外にも腰痛持ちの人が少ないことが分かっており、必ずしも直立2足歩行が腰痛の原因とは言えなくなってきました。 それどころか、近年においてはむしろ歩行による適度な刺激は椎間板の髄核を活性化させ、腰にとって良いことと考えられるようになっています。 恐らく直立2足歩行は腰痛を生じる引き金となったことは間違いないことですが、直接の原因は、それに前屈姿勢のストレスが加わることにあるのではないかと考えられています。 |
また、一言で「腰痛」と言っても一過性のものから慢性のものまで、また突然発症するものから緩徐に発症するものまで、さらには器質的な原因によるものから心因性のものまでその病態には様々なものがあります。 ここではその中でも普段われわれが頻繁に遭遇する疾患としての「急性腰痛症(ぎっくり腰)」「腰部椎間板ヘルニア」「腰部脊柱管狭窄症」の3疾患について説明します。 |
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(1) 急性腰痛症(ぎっくり腰) |
何気ない動作、とくに中腰姿勢に捻れが加わったような動作をしたときに突然起こる急性腰痛で、そのあまりの突然さから“魔女の一撃”とも呼ばれます。原因は椎体後方の上下にある椎間関節といわれる関節に、滑膜という関節内の軟部組織が陥入し挟まることにより生じると考えられています。安静により殆どが数日間で軽快しますが、必要に応じてコルセットの装着や、消炎鎮痛剤・湿布などの外用剤を用いたりリハビリ加療を行います。椎間関節内へのブロック注射が有効なことも有ります。 時にぎっくり腰が癖になっている人も見かけられます。そのような人は腰痛が治まった後に、日頃から腹筋や背筋の筋力トレーニングを行い再発を予防することが大切です。筋力トレーニングの方法も気を付けなければかえって腰を悪くすることもあるので医師の指導を受けられることをお勧めします。 |
(2) 腰部椎間板ヘルニア |
腰部椎間板ヘルニアは椎間板の中心にある髄核という組織がそれを囲む線維輪を破って後方に脱出し神経を圧迫することにより腰痛および下肢痛を生じる疾患です。椎間板の加齢的変化に椎間板内圧が高まる動作が加わり生じるもので、20〜40歳代の活動性の高い男性に多く発症します。 |
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脱出した髄核の多くは次第に吸収され自然治癒する可能性があるため初回発作で手術を行うことは無く、まずは安静(楽な体位での臥床、コルセットによる局所負荷の軽減・日常生活動作の注意など)、薬剤(消炎鎮痛剤・筋弛緩剤・安定剤など)、注射(筋肉注射・硬膜外ブロック・神経根ブロックなど)、リハビリ加療(温熱療法・牽引療法・電気治療など)などの保存療法を試みます。しかし、これに抵抗する激烈な疼痛のため数ヶ月間日常生活に支障が出たり、神経麻痺が出現し始めるような重症例には手術療法が行われます。 |
(3) 腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう) |
腰椎椎体の後方には脊柱管という脊髄神経や馬尾神経といった神経が通る管腔があいています。さらにそれぞれの椎間からは左右に1本ずつの神経の枝(神経根)が伸び、下肢の知覚や運動を司っています。腰部脊柱管狭窄症では脊柱管が何らかの原因で狭くなり馬尾神経や神経根を圧迫し、腰痛および臀部から下肢への疼痛を生じます。また間欠破行(歩行により下肢痛が増強し、その場で前かがみや腰掛けて休むと症状が軽快する症状)を生じるのが特徴的です。 |
(横断面:MRI像) |
(横断面:MRI像) |
狭窄の原因としては加齢的変化により生じた骨棘や後縦靭帯や黄色靭帯など脊柱管内にある軟部組織の肥厚によるもの、時に腰部椎間板ヘルニアや腰椎すべり症を合併するもの等があります。多くはコルセット装着による安静や投薬・リハビリ・硬膜外ブロックや神経根ブロックなどの保存療法で症状の軽快を見ますが、時に脊柱管を開放する手術加療を必要とすることもあります。
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この他にも腰痛を生じる疾患には様々なものがありますので、腰痛でお悩みの方は、まずは整形外科専門医の診察をお受けになることをお勧めします。 |
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当院では木曜の午後に国際親善総合病院整形外科医長である三宅敦医師を、第3土曜日にはけいゆう病院整形外科部長である山根淳一医師を招き「脊椎専門外来」を併設しております。脊椎疾患でお悩みの方は是非一度、当専門外来の受診をお勧めします。 |
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